スーツ生地の説明を見ていると、「Super 100’s」「Super 120’s」などの表記を目にしたことはありませんか?
何となく高級そうな響きだけど……
その意味や違い、実はちゃんと説明できない人が多いのも事実。
でもこの「Super〇〇’s」は、スーツや和装の“生地の質”を選ぶ上でとても重要なヒントになるのです。
今回は、そんな「Super〇〇’s」表記の意味と、シーンに合った選び方をわかりやすく解説します。
「Super 100’s」「Super 130’s」などの表記は、実はウール原毛の“細さ”を表す国際的な品質規格です。
元々は「1ポンド(約454g)の原毛から何メートルの糸が引けるか」を基準としていて、数字が大きくなるほど、より細くて繊細な糸を使っていることになります。
たとえば──
Super 100’s:18.5ミクロン前後(標準的な高級ウール)
Super 120’s:17.75ミクロン前後(やや細め、艶が出る)
Super 150’s:16.0ミクロン前後(極細。光沢・ドレープ性に優れる)
参考までに、人の髪の毛は約60〜80ミクロン。
つまり、Super 100’s以上の生地は人の髪の4分の1以下の繊維でできているという驚きの繊細さです。
たとえば──
Super 100’sは、適度にしっかり感がありビジネス向き。
Super 120’s以上になると、ドレープ性が高くエレガントな印象に。
結論から言うと、「数字が高ければ高級=万能」というわけではありません。
数字が高くなるほど確かに艶やかで滑らかになりますが、同時に耐久性が落ちる傾向もあるため、使い方次第なのです。
Super等級 | 特徴 | 向いている用途 |
---|---|---|
Super 100’s〜110’s | 適度なハリと耐久性。扱いやすい | 日常着・ビジネス用の袴 |
Super 120’s〜130’s | 柔らかく艶がある。上品 | おしゃれ着・上衣・式典着 |
Super 140’s〜150’s以上 | 極めて繊細で滑らか。贅沢な質感 | 晴れの日・特別な1着に |
高番手(Super 130’s以上)の生地は、
まるで絹のような艶と滑らかさを持ち、光の角度で表情が変わる“布のジュエリー”と評されることもあります。
たとえばゼニアの「TROFEO」やロロ・ピアーナの「Tasmanian®」などは、Super120’s〜150’sの代表格。
軽く、しなやかで、エレガント。それでいて体の動きに美しく追従します。
洋服だけでなく、最近ではこのスーツ用高級生地を用いた袴や羽織も人気を集めています。
「スーツ生地で仕立てる袴」は、まさに現代の暮らしに馴染む和装として支持されています。
例えば──
Super100’sの袴:仕事帰りにそのまま着てもシワになりにくい。日常着に最適
Super130’sの羽織:フォーマル感があり、軽くて快適。春秋の晴れ着にぴったり
Super150’sの上衣:特別な日にふさわしい艶と気品。演出力が抜群です
数字が高くなると確かに「手触りが柔らかく」「見た目の光沢が増し」ます。
しかし、それと引き換えに、シワ・摩耗への弱さや反発力の低下といった“デメリット”もあります。
たとえばSuper150’s以上になると、生地はとても上品で軽やかですが、
日常の動作や長時間の着用には少し気を遣う必要が出てきます。
つまり――
✅ 数字が高い=常に優れているわけではない
✅ 用途やTPOによって“適した番手”がある
というのが、本質なのです。
では、どんな場面で、どのSuper番手を選べばよいのでしょうか?
以下に、和装(袴・羽織など)にも活かせる視点で整理しました。
シーン | 推奨Super等級 | 理由 |
---|---|---|
日常着(仕事帰り・街歩き) | Super 100’s〜110’s | シワに強く、気軽に着られる。通気性も◎ |
おしゃれ着・軽フォーマル | Super 120’s〜130’s | 柔らかさと上品さのバランスが良い |
晴れの日(式典・講演) | Super 140’s〜150’s | 光沢感と艶、存在感が際立つ特別感 |
特別な勝負着 | Super 160’s〜180’s | 圧倒的なドレープと“纏う芸術”。取り扱いには注意が必要 |
「Super〇〇’s」という表記は、単なるスペックではありません。
それは、着る人の価値観・シーン・心地よさを映し出す鏡でもあります。
数字だけにとらわれず、「自分はどんな場所で、どんな気持ちで、どんな布をまとうのか?」を考えることが、本当の意味での“粋な装い”につながっていくのです。
Super110’sの袴 → 着物初心者にも取り入れやすい日常スタイル。仕事終わりにさらっと羽織れる
Super130’sの羽織 → 軽くて光沢が美しい。展示会やちょっとした集まりにぴったり
Super150’sの上衣 → 着た瞬間に“格”が生まれる勝負服。静かに気品を放つ一着
「Super〇〇’s」という表記は、生地の魅力を読み解く“ひとつの言語”です。
数字の違いを知ることで、単なる「好みの色・柄」だけでなく、着心地・TPO・自分らしさを軸に生地選びができるようになります。
ぜひ次に生地を選ぶときは、数字の奥にある繊維の物語にも耳を傾けてみてください。